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【台湾人の物語】私と日本酒の20年

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台湾人 / 台湾 日本酒 / 台湾 酒 / 台湾 文化 】

(日本語翻訳=Kotaro)

先月、高雄・駁二にある誠品書店で、川本三郎の本を2冊買った。
パラパラとページをめくった後で、急いで喫茶店に入り、《 少了你的餐桌 》を一気に読み終える。

この喫茶店ではいつも私が好んで座る席がある。
左側はすりガラスの壁があって、席の前側には小さな窓。右側には冷蔵庫が半分身をのぞかせている。あまりお客さんが来ないところなので、今もそこには段ボール箱がそのまま置かれている。スペースは狭いことこの上ないのだが、他のお客さんを背にして座ると無性に落ち着く。もちろん後ろは多少ざわついているけれど、むしろそれが心に静寂をもたらし、読書に最適なのだ。

だから本を読みながら安心して、時に目を濡らし、時に笑うことができるというわけ。
ふと感情の機微に触れて思わず笑ってしまうのは、この本で何度も出てくる「 熱燗 」に関するところだ。

お酒を嗜むことに関しては、私はどうやら著者の川本三郎と似ているのではないか。

1。台北国際酒展

4月中旬の週末、急ぎ台北に足を運んだ。 台北国際酒展に行くためだ。
今回の展示会のテーマは「 日本酒 主義 」。

台北国際酒展

いつもフォローしている 日本酒 のディーラーがいずれも出展しているということだったので、覗いてみることにした。
事前に少し下調べをして興味のあるお酒を選んでいたとはいえ、このような展示会に来るのは初めてだし、その場でどのように感じるかは状況次第だ。

本当ならつまみも用意して持って行きたいところだったが、午前11時の開場とあってさすがにこれは諦め、バックパックに水の入ったボトルを入れて、会場に向かった。笑えるでしょう?結局、自分の舌で味わって確認するしかない!

台北国際酒展

台北国際酒展

台北国際酒展

私が初めて 日本酒 を知ってから、20年が経とうとしている。
その年は日本の伊勢丹が台湾からまだ撤退していなかった頃で、毎年開催されていた日本展で日本酒を一本購入した。

透明の瓶は繊細で明るく、優雅かつ軽快なデザインで、金沢21世紀美術館を思い出させるような雰囲気があったように記憶している。この酒は、新潟県南魚沼郡の白瀧酒造が醸造した「上善如水」純米吟釀だった。

2。20年前の日本酒との出会い

二十年前に私が初めて口にした 日本酒 が具体的にどのような味わいだったのか、今はもう曖昧になってしまった。
でもはっきりしていることは、展示会で冷酒を試飲したときに販売員の女性の説明を聞きながら、香りを嗅ぎ、口に入れたときの喉ごしが、なめらかでフルーティな爽やかさだったことで、「ああ、なるほど。」と感じたことだ。
初体験の感覚は素晴らしく、そのまま日本酒の世界に夢中になっていった。

このときから数年にわたって、宮尾登美子による漫画本《 》、尾瀬朗の《 夏子的酒 》と《 奈津之藏 》、《 藏人 》、《 東京人 》の日本酒特集、他の資料などを読みあさった。

宮尾登美子の《 藏 》

日本酒 のあらゆるつながりを知ることによって、個人から家族、商品から産業、農業から経済、保守と革新といった、日本民族固有の文化継承や歴史観、精神思想へと私の関心は広がっていった。酒造の歴史や酒造りの神様・杜氏の精神、蔵元の養成、酵母の醸成、酒とつまみの取り合わせ、ラベルのデザイン等々から広がる知識欲。文化史、飲食史、美術史… 本当に素晴らしい。

驚きの嬉しさだ。

この素晴らしさは、造園された庭園の中で咲く花ではなく、道端で咲き乱れる草花のように、土地と石の間に静かに屹立していて、近づいてよく見ないと分からない。どの草花も独特の姿態と生命力を有している。

日本酒 の世界への入口は、もしかするとこのような感覚がいちばん合っているかもしれない。

原料の文化(米)と自然の力を活用した(発酵)の醸造は、他の酒(ウイスキー、ワイン、ビール)と比べると緩やかで遅いものの、そのぶん温和で、決して凡庸なものではない。

身体への影響は小さく、アルコールの作用も緩やかだ。気温の差も味覚の感じ方を変える。山を越えると平原が広がるというほど大げさなものではないが、頭を上げて一歩前に出ると違う景色が見えるという程度のものだ。
面白いのは、これら一切の進む速度は緩やかなのに、エネルギーは静けさの中に隠されていて、なおかつ蓄積できないことだ。ここ数年来、日本酒経験を重ねるごとに新たな発見があり、探究を続けている。

説明しきることができない。それが日本酒の魅力かもしれない。

3。直感に頼る

近年ネットの影響力がさらに強くなり、日本円との交換レートが良くなっていることも相まって、日本酒関連のコミュニティやホームページ、議論の内容なども様変わりしている。選択肢も豊富だ。私は業者ではなく、ただ日本酒を嗜むのを楽しみとする愛好者に過ぎないが、たまにネット上の情報を巡って豆知識を拾ったりして、日本酒体験の糧にもしている。

でも専門知識や雑談は、あくまで参考にしかならないと思う。
私はあまりに主観的な判断や評価とは距離を置くようにしている。自分の舌の味覚を使って自分で好き嫌いを考える。知名度のある商品かどうかはあてにしない。
日本酒を嗜むというのは、気軽にお酌をしながら、心を開いて楽しむ、そして感じる。それでいいと思う。一方で、まだ知ったばかりで十分に飲んでいない時には、安易に結論を下さないことが大事だ。
酒の表現はその時の状態や環境にも左右されるので、毎度同じ酒を飲んだとしても、それが断片的な経験でしかないことを認識するべきだと思う。だから私は決して結論を急がない。

日本酒 の種類は本当に豊かで、しかも良い状態の時に出会えるかどうかも縁しだい。毎回その味覚を記憶しておく価値のある経験だ。

日本に旅行に行ったときは、いつも1日目もしくは2日目に、日本酒の小瓶(180ml)を買う。宿に戻って現地の惣菜などと合わせて味わってみるためだ。
以前に新潟市の魚市場で焼き鮭を買って頂いたときの滋味は忘れることができない。酒肴としてこれほど旨いものを食べたことがない。また、台湾に持ち帰った日本酒に、東港の名産・雙糕潤を合わせたときも、予想外に良い組み合わせだった。

日本酒 を飲む回数が増えるにつれて、年齢とともに心身の状態も安定してきて、好みが次第に純米酒へと向かっていく。でもやはり銘柄を選ぶときは直感で選ぶのが良い。

日本酒

日本酒

そう、直感。表現するのは難しいけれど、酒のラベルを観たときの直感だ。もちろん試飲できればそれで決めるのもいい。そのときの気持ちに従うべきだ!

このようにして私は多くの日本酒を飲み続けてきた:
宮城縣の浦霞禅純米吟釀、福酒造の純米吟釀生原酒、石川県加賀の酒造による琥珀月山廢純米吟釀… そして最近飲んだばかりの銘柄は、岐阜県養老郡の射美特別純米15、奈良今西酒造みむろ杉特別純米辛口、さらに300年の歴史を持ち自然農法を遵守してきた福島県金寶酒造の仁井田本家自然酒純米吟釀などなど。

昨年、農業を営む友人の小瑩は、花蓮で自ら作った米種「好好吃飯」吉野一号を、宜蘭の酒造に委託して、「野草」「堂前燕」と名づけた純米酒を少量販売し、幸いにもこれを飲む機会に恵まれた。

日本酒

もしかしたらまだ日本酒を飲んだことのない人は、一体どうやって銘柄を選んだらよいのか?と迷うかもしれない。

以前の日本酒は、少しオジサン臭くて固い雰囲気があったかもしれない。
小説やテレビドラマで観る、街の居酒屋などの印象がこうした雰囲気を作ったのだろう。
日本酒は男性が飲むものというお決まりのイメージだ。

でも時代と経済の変化によって、日本酒の世界は多様化が進んでいる。
若者や女性を惹き付けるため、瓶のデザインも柔らかくなり、醸造過程も工夫を重ねて全く新しい商品が登場している(シャンパンのような口当たりのスパークリング種やさわやかでフルーティな香りの商品など)。また、女性を酒造の神様に担ぐ酒造も現れ、伝統を超える新機軸を打ち出していて、日本酒の未来に活力をもたらしている。

以前に観た報道番組では、渋谷にある酒屋「YUMMY SAKE」を紹介していた。日本酒の利き酒とAIのアルゴリズムを掛け合わせることで、顧客が好きな日本酒の味を選び出すという。店内では利き猪口が10個用意され、顧客はそれぞれの試飲後の感想をアプリ内で選択する(たとえば、なめらか、しっかり、感動的など)。これをAIが解析することで、顧客が好きそうな日本酒を選び出す。
とても興味深かったので、以前に登録して試してみたことがある。
ホームページのデザインも素晴らしく、色彩も春のような感覚だ。女性がターゲットに設定されていて、より多くの人に日本酒に親しんでもらうためのこの試みは、女の子たちに受け入れられるだろうか?!

でも正直なところ、日本酒の味を表す形容詞を選んだものの、どうもおかしい。形容詞が可愛すぎるのだ。このホームページを作ったデザイナーの心意気は分かるのだが、突然興味を失ってしまった。10種の利き酒を口に含み、それぞれの感想を選択するというのは、ちょっと忙しすぎて味覚がおろそかになってしまう。リラックスして酒を楽しむというより、少々緊張感がありそう。
もしかすると私は最初からオジサン派だったのかもしれない。熱燗にぴったりな純米酒、焼き上がったばかりでいい香りの焼き鮭。これを静かに頂くというのが私の原則なのだ。

なので… やっぱり「直感」という言葉に戻ってしまう。
人との出会いと同じく、最初に一目見たときの印象、そして言葉を交わすごとに分かり始める。
ゆっくりゆっくり、理解を深めるのだ(笑)。
とはいえ、直感に頼るというのは言うほど簡単なものではない。

選ぶのが難しくて、ゆっくり研究して厳選するなんて手間が面倒なら、まずは気楽に店員にお勧めを聞くのも良い!

4。和歌子酒

4年前、日本酒をテーマにした日本のドラマ「 和歌子酒 」(ワカコ酒)を観たが、最近あらためて観直してみた。
ストーリーは「 孤獨的美食家(孤独のグルメ) 」に似ている。五郎さんは酒を飲めないが(これはちょっと惜しい(笑)),若いOLの和歌子は酒を飲むのが大好きなのも楽しい。

酒を飲まないオジサマと、仕事を終えて一杯飲みに来た若いOL。グルメを楽しむ表情は喜びに満ちていて、観る人に乗り移ってしまう。お腹も空くし、思わずリラックスして微笑してしまうのだ。

小酌

そう、美食を楽しむのも本当に楽しいことだ。
酒肴、つまみも楽しい。

小酌

小酌

自分がより自分らしく物事を進めるには、時間をかけて自分の文脈を理解して、楽しむための方法を確かめていく必要がある。

講談社が出資し、星海社が運営する「 ツイ4 」は、日本で最大級のオンライン四コマ漫画プラットフォームである。毎日一話が更新され、Twitterでも同時に配信される。今年の3月初め、杉村啟原作のアザミユウコ のアニメ作品《 白熱日本酒教室 》の第2巻が出版された。Twitter上で累計221回も連載されたものだ。

アザミユウコは新潟県出身。新潟は魚米の鄉で、日本酒の種類も豊富なところである。
アザミはかつて「酩酊女子制作委員会」なる組織を立ち上げ、日本酒が好きな女性を描いた漫画作品を多数生み出してきた。
こうして彼女が描いた《白熱日本酒教室》は、2人の若い女性の対話を通じて、日本酒に関する一連の知識を分かりやすく教えてくれる。日本語が初級程度の私でも興味津々の内容で、

日本酒 のことを気軽に知りたい人にお勧めの作品だ。

20年にも渡って飽きることなく探究してきた日本酒の世界。私にとってこれは大きな縁だったに違いないと最近強く感じている。

ツイ4 《 白熱日本酒教室

 

 

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