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【台湾茶小說】茶金 GOLD LEAF

茶金

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【茶金 小說 / 台湾小說 / 台湾書籍

(日本語翻訳=Hiroyuki Shima)

飲むのはただのお茶ではなく、それは人生の縮図です

小説の中では、時代の変化に伴う記憶と涙をつづっています。同じ場所の茶畑で同じ茶葉、同じ葉脈であっても、時代が異なると違ったお茶が発酵されます。人生も、経てきた経験に応じて異なった味を醸し出します。大きな時代とそれぞれの人物、成長する背景の違い、恋する相手、支持してくれる家庭、親戚たちの家業、国の福祉政策、製茶に対する誇りなどから、それぞれの人間が人生というお茶を点てていくことになります。

吉さん(本名は張福吉)-「毎回目の前のことにだけ囚われ、少し損をすると嘆き、儲けが出ると得意になる。利益が出ると皆に分け与え、危険だと聞くと逃げようと考える。これまで生きてきてそんな商売人をたくさん見てきたが、一人として成功した人間はいない。」

この小説は新竹北埔の茶商・姜阿新をモデルにした物語です。まず登場するのは日光公司の董事長、豪快な生き方の吉さんです。彼は、会食があれば必ず皆にふるまい、返せない負債はないし、売り出せないお茶はありません。今のサラリーマンのなんでも欲しがるという欲深い仕事の考え方と比べると、彼は現在を見ながらも未来を洞察し、それに賭けています。足元が不安で、倒れてしまうと粉々になってしまうような状況でも、気概を持って立ち向かっていきます。一見したところ馬鹿正直ですが、その生き方を見ると一本筋が通っています。政治的に危機的な状況に陥り、茶商の経営が行き詰まり破産を宣告せざるを得なくなったときでも、信用を重んじる彼は、先に茶農家と茶の販売会社の社員に資金を回します。台湾の情と義のある生き方を実践しています。

薏心 -「プレッシャーは成長のための原動力となりますが、あまりに巨大な負債は残酷にのしかかってきます。」

物語の大部分は主人公の薏心の視点で語られます。初めは何も分からない社長の娘として登場します。民国時代の両親の紹介による婚姻と自由恋愛の狭間に揺れながら、二度の婚約破棄に至ってしまいます。茶商の運営に関しては、性格のまっすぐな吉さんとぶつかり、日光公司の運命を変えていくことになります。農作物が豊作になると、価格は暴落し茶農家は苦境に陥ります。彼女は忍耐強く収穫されたお茶の価格が安定するのを待ち、コストを節約して債務を負った茶師や従業員を助け、最終的には会社の経営を立て直します。外交部からの大口注文の件では、コストへの配慮から特殊な材料を使って古いお茶に変え、赤字をコントロールして経営を立て直します。インドとベトナムのお茶の攻勢を受ける環境では、彼女のリーダーシップの元、紅茶から緑茶の輸出マーケットに乗り出し、さらにウーロン茶の品質を向上させ、日光公司の活路を見出します

范文貴 -「一人の人間を見出して一生お茶を飲み続けるというのは、簡単なように見えるが実に難しいことだ!」

文貴は昔の入り婿文化を代表する人物です。家を存続させるための婚姻をして、社会を安定させるという文化です。お茶工場の子供である文貴は、日光公司に入社し実習を重ねた後、薏心とは破局してしまうのですが、商売の才能があるために薏心を事業の面から助けていくことになります。これは敵でもあり友でもあるという複雑な関係です。彼の考えていたことは昔の義理でしかありませんでした。運命のいたずらから吉さんが破産した後、元々入り婿候補であった文貴が日光公司を受け継ぐ唯一の人物となります。彼は薏心のことを好ましく思っていますが、薏心の心の人、つまり彼女が一生お茶を飲み続けられる人にはなりえませんでした。

KK(劉坤凱) -「我々みんな、些細な利益に目がくらみ、その実周りの暗闇に気が付かない。そして、その暗闇に飲み込まれそうになると、よって立つことのできる場所がどこなのか分からなくなる。」

前に述べた人物たちは、それぞれの立場から自分の運命を切り開いていくのですが、アメリカ援助時代を代表する懷特公司のKKは、様々な側面を持つ魅力的な人物として描かれています。言論が抑圧されている時代、自らが一つの駒でしかないと自覚している彼は、それでも命を投げうって政治に対する自らの見方を表していきます。非常に複雑な状況の中で、彼は前身が東南アジアでの日本軍戦争捕虜であるために広い見識を持ち、台湾でアメリカとの関係を取り持っていきます。国民政府と民営化する肥料工場との関係から、薏心に情報を流しアドバイスをすることで日光公司をサポートします。成功も失敗も共にするという関係でした。家族を時代の流れの中で失い、心に重い枷を負ったKKは、薏心の想いに応えることができず、そして彼も薏心のことを想っていると伝える機会を逃してしまいます。

夏慕雪 -「舞台の上では、どの場面でどんな演技をすればよいか、どこまで歌えば幕が降りるのか分かる。しかし現実の人生ではどうやって舞台を降りればよいのだろう?」

永樂戲院の夏社長と呼ばれている慕雪は、KKと同じように行方不明になっている父親を探すという縁で彼と関係を持ちます。愛憎のはっきりしている彼女はKKと同様、複雑に絡まった時局の中で無力感に苛まれています。より遠くを見、より多くを考えることで、逆に自分の生活の中の小さな幸福を目指すようになります。歌うことで感情を表すことがありますが、KKに対しては感情を隠しています。やるべきことはやり、後悔はしないという生き方の彼女は、KKの慎重な姿勢と比べると、はっきりと自分の立場をわきまえています。そして、最終的には自分の伴侶となる人物と父親の関係を知ることから、結婚したその晩に自殺してしまいます。

お茶の価値はその価格にあるのではない。その背後にある人生の物語にこそある。

ドラマのシナリオというのは原作の著書と同じというわけにはいきません。小説での表現はテレビドラマのそれとは異なります。テレビドラマは視聴者、視聴率、ストーリーの長短などから改編が加えられます。小説として読むと、虚構と真実の間をうまくつなぎ合わせ、それぞれの役柄が必ずしもハッピーエンドとは終わらずふさわしい結末を迎えます。お茶の香りが漂うのに伴い、悲しみも癒され、甘い後味が残ります。天皇茶、総理茶、そして三代の茶師を経た台湾の日光茶は、時代の変化に伴い果物の香りを漂わせ、新しいお茶の時代を切り開いていきます。

👉 『茶金』(博客來)

 

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